胎児の正常発生過程におけるアポトーシスを起こした細胞の認識・排除機構にマクロファージがどの様に関与するかを検討することを考え、放射線による胎児の催奇形性に着目し、本研究を計画した。マクロファージが用いる認識分子の一つとしてガラクトースとN-アセチルガラクトサミンに結合するCタイプレクチン分子(MGL)に注目している。現在までに、妊娠マウスに放射線を照射することで誘導される胎児内のアポトーシスを起こした細胞の周囲にmMGL陽性細胞が集積していること、標識リコンビナントmMGLが切片上のアポトーシス小体に結合することが明らかになっている。胎児発生初期の放射線の催奇形性へのMGLの関与を検討した。Mgl+/-マウスを掛け合わせプラグを確認し妊娠10.5dpcにX線を全身照射し、36時間後に胎児を摘出し凍結切片を作製し、免疫組織学的解析を行った。TUNEL法にてアポトーシスを、抗体染色によってMGLを、標識リコンビナントMGLによって結合部位の検出を行った。ホモ欠損マウスにおいてMGL陽性細胞は消失していた。それに伴ってTUNEL法によって検出されるアポトーシスを起こした細胞数の増加が観察された。標識リコンビナントMGLの結合様式にはMGL遺伝子の欠損は影響がないことが確認された。ゆえにアポトーシスを起こした細胞の処理にMGLが関与していることが示唆された。 本年度は新たにクローニングされた、mMGL2の欠損マウスの作製を行った。マウスゲノムライブラリーよりmMGL2のすべてのエクソンをコードするクローンを得、塩基配列を決定しターゲッティングベクターを設計した。相同組み換え体ES細胞をセレクションし、ブラストシストに注入することでキメラマウスを作成中である。
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