研究概要 |
腎近位尿細管の刷子縁膜側の分泌に関わるトランスポーターの検索を行った。モチーフの保存性からrenal specific transporter(RST)に着目した。HEK293細胞を宿主細胞として安定発現系を作製した。Na+存在下で、尿中へと排泄される典型的な有機アニオンであるP-aminohippurateの取り込みはベクター導入細胞に比較して、有意に増加していた。更に、バッファー中のNa+をK+に置換すると、更に取り込みは促進された。この効果は、イオンの置換に伴う脱分極に由来するものと考えており、更に電気化学的手法により確認する予定である。更に、RSTは、PAHのほか、枯葉剤である2,4dichlorophenoxyacetate、benzylpenicillinなどの有機アニオンも基質とすることが明らかとなった。免疫染色を行ったところ、モチーフ配列から予測されたとおり、腎臓の尿細管の刷子縁膜に局在することが明らかとなった。異常のことから、RSTは生理的には有機アニオンの分泌に関与していることが示唆された。 ヒト腎臓において、現在刷子縁膜に局在していることが報告されている有機アニオントランスポーターについてmRNAの定量を行ったところ、OAT4の発現がもっとも高く、ついでMRP4、RSTであり、MRP2の発現量は非常に低いことを見いだした。OAT4の安定発現系を確立し、機能解析を行ったところ、従来の報告通りステロイドの硫酸抱合体を基質とするものの、マウスRSTで観察されたような膜電位に依存した有機アニオンの輸送は観察されなかったことから、OAT4は有機アニオンの分泌に関与していないことが示唆された。
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