本研究は3年計画で、在宅末期がん患者の家族に対する看護支援法の開発とその有効性の検討を行うことを目的とし、初年度である本年度は、第1に、昨年度に同テーマで日本学術振興会特別研究員(PD)として科研費の申請を受けて行った、在宅末期がん患者の家族の在宅療養中のニーズについて調べた全国郵送質問紙調査(n=528)の結果を分析し、まとめた。その結果として、在宅における患者と家族の看護支援ニーズ、および在宅療養の最終目的である在宅死の実現および患者・家族の満足度の上昇に関連する要因を明らかにし、それを国内・国際学会で発表するとともに、Palliative Medicine誌に投稿し受理された。第2に、末期がん患者とその家族の在宅療養におけるニーズに関する文献レビューを行うことで、上述したニーズ調査の結果と先行研究の知見との共通性および独自性を明確にし、我が国の在宅末期がん患者とその家族のニーズを満たす家族へのケア内容を抽出した。第3に、訪問看護ステーションなどの実践活動への参加を通して、我が国の末期がん在宅ケアの現状に関する問題点を把握した。以上の活動を通して得た情報を基に、本領域の看護専門家との討議を重ね、"末期がん患者の家族のための包括的な情報提供および教育を主体とした看護ケアマニュアル"を作成した。そして、このマニュアルの実施可能性を検討するために、都内訪問看護ステーションにて末期がん在宅ケアを受けている家族25例を対象に訪問看護師による看護ケアマニュアルを用いた介入を実施し、対象者の意見を基に内容を修正し、完成させた。最終的な末期がん患者の家族のための看護ケアマニュアルの内容は、「家族にできる患者の症状に対するケア、日常生活上のケア、家庭で行う医療処置、死の看取り教育、スピリチュアルケア、グリーフケア」とした。これらのケアを実施するためのマニュアルとして、「家族用ケアマニュアル」および「家族が家族用ケアマニュアルを使用するための家族教育を実施するための訪問看護師用ケアマニュアル」の2種類を作成した。
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