セリンアセチル転移酵素(SATase)は硫黄同化系の重要な中間体ο-アセチルセリン(OAS)を供給する酵素である。植物を用いた環境汚染物質の除去(ファイトリメディエイション)を目的として、システインによるフィードバック阻害を受けないように点変異したSATase遺伝子を高発現させたトランスジェニック植物を作製し、その硫黄同化能の向上とカドミウム耐性を検討した。 1.点変異SATase遺伝子を高発現するトランスジェニックシロイヌナズナの解析 システインによるフィードバック阻害を受けないSATaseを細胞質、あるいは葉緑体に局在させたトランスジェニックシロイヌナズナをおよびトランスジェニックタバコを作製した。SATase活性はいずれの植物も野生型に比べ高くなっていた。トランスジェニックシロイヌナズナについてSATaseにより生合成されるOASを定量したところ、野生型シロイヌナズナの数十倍に増加していた。それに伴い、システイン、グルタチオン量も野生型の数倍に増加していた。このことから変異SATase遺伝子を高発現させた植物では硫黄同化能の向上が確かめられ、含硫黄環境汚染物質や重金属に対する耐性が期待された。 2.トランスジェニック植物におけるカドミウム耐性 作製したトランスジェニツクシロイヌナズナについて30〜400μMカドミウムを含む培地で生育させカドミウムに対する抵抗性を検討した。その結果、高いSATase活性を持つ植物は野生型のものに比べカドミウムに対する抵抗性を示した。しかしながら植物中に取り込まれたカドミウム量をICP-MSにて測定したところ、トランスジェニック植物では一個体あたりの取り込んだカドミウム量は野生型に比べ多くなっていたが、新鮮重あたりの取り込み量に有意の差はみられなかった。
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