(1)研究の目的 本研究の目標は「1分子単位で分子モーターを操作してそのメカニズムを解明する」ことである。我々は、F1モーターというATPで駆動する世界最小の回転モーターが、ATPの化学エネルギーをどのようにして力学的な仕事に変換しているのかを研究している。本研究では、磁気ピンセットを改良し、「回転モーターの回転ポテンシャル測定」と「F1モーターの力学的活性化」に関する研究を行なっている。 (2)結果 H14年度は、これまでの磁気ピンセットを開発・改良して、ビデオ録画と同期しながら400pNnm程度までのトルクを任意の角度で発生する磁気ピンセットを作製した。「回転モーターの回転ポテンシャル測定」に関しては、静止トルクの絶対値測定に成功し、おおよそ30〜80pNnmであることを求めた。また、トルクが角度に依存して2倍程度変化することを明らかとした。また、「F1モーターの力学的活性化」に関しては、不活性化状態に陥り停止しているF1モーターを回転方向へ40°程押すとただちに活性化することを明らかとした。これを逆方向(ATP合成方向)に回しても活性化は起こらなかったが、ATP合成の基質であるADPとPi存在下では180°程度おすとこれも活性化することが明らかとなった。詳細を述べるスペースはここに無いが、これは我々の現在考えているF1モーターのメカニズムとも良く一致する。
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