カスペースは、アポトーシスの実行に関わるプロテアーゼのファミリーである。種々のアポトーシス刺激は、ミトコンドリアからcytochrome cの放出を促し、cytochrome cによるApaf-1/カスペース9複合体の活性化を誘導する。細胞死促進型Bcl-2ファミリーのメンバーであるBaxのミトコンドリアへの移行は、ミトコンドリアからのcytochrome c放出において重要なステップであると考えられている。そこで、JNK経路が、Baxの細胞内局在の制御に関与しているかを検討した。Baxの局在は、GFPとの融合タンパク質を発現してリアルタイムに検出する方法と、内在性Baxの局在を細胞固定の後、免疫染色によって検出する方法で調べた。 活性型JNKの発現は、Baxのミトコンドリアへの移行を促進することを見いだした。また、スタウロスポリンあるいはアニソマイシンの刺激でBaxはミトコンドリアへ移行するが、この際に優性阻害型JNKを発現した場合にはBax移行が阻害された。従って、JNK経路の活性化がBaxのミトコンドリア移行に貢献していることが示唆された。しかしながら、JNKはBaxを直接にはリン酸化しなかったので、何らかの因子を介して間接的にBaxの局在制御が行われていると考えられる。またこれまでJNKの基質として知られていたc-JunはJNKによるBaxの局在制御には関与しなかった。最近Baxは14-3-3タンパク質ファミリーに結合することで、ミトコンドリアへの移行が阻害されていることが明らかになったが、我々はJNKが14-3-3を直接にリン酸化すること、またリン酸化された14-3-3はBaxと解離することを見いだした。このメカニズムがJNKによるBaxのミトコンドリアへの移行に寄与していると考えている。
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