研究概要 |
1.ユウレイボヤ(Ciona savignyi)の卵を遠心して生じる四種類の卵片のうち、黒卵片と名付けられた卵片には筋分化決定因子や、内胚葉分化あるいは原腸陥入にかかわる因子が含まれている。一方、赤卵片と名付けられた卵片にはこれらの因子は含まれない。これまでに黒卵片に局在する因子を包括的に明らかにするため、二つの卵片から未増幅のcDNAプラスミドライブラリーを作製し、合計3000程度のEST解析を行ってきた。これをさらに発展させ、合計27,000のESTを得た。詳細は現在解析中であるが、両者の比較により、どちらかの卵片に有意に局在する決定因子の候補遺伝子をいくつか得つつある。 2.私たちの研究グループはカタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)のドラフトゲノム配列およびESTを公開したので、それに伴い、ホヤのゲノム内に含まれる既知の転写因子およびシグナリング分子の相同遺伝子を本研究において網羅的に同定した。脊椎動物で知られている基本的な遺伝子はほとんどホヤゲノム内に存在するが、パラログの数はホヤゲノムにおいては非常に少ないことが明らかとなった。このことは発生における遺伝子ネットワークの解明という点において、ホヤ胚の優位性を示すものである。現在、これらの遺伝子について網羅的に発現パターンを調べている。実際に、発現パターンから、内胚葉の決定に関わる母性β-catenin遺伝子の下流であると考えられるいくつかの遺伝子について機能解析を同時に進めているところである。このことにより、ホヤ初期発生において、特にβ-cateninの下流で働く遺伝子群についてそのネットワークを明らかにしつつある。
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