これまでの経過より、類似した特定の転写制御因子のサブファミリーが、器官発生の領域特異性の決定に関与していることが明らかにされている。私は肝臓系内胚葉においてもなんらかの転写調節因子群が肝臓内胚葉における領域特異的分化を制御していると予想した。そこで、以下の手順で肝臓発生に関わる新規転写制御因子を同定する。 (1)RT-PCRによる転写制御因子関連遺伝子群の単離 ホメオボックス遺伝子などの転写遺伝子群に注目し、それらの保存領域に対するdegeneratedオリゴヌクレオチド対を合成する。次に本オリゴヌクレオチド対を用いてニワトリ胚肝臓由来のcDNAよりRT-PCRを行い、特定の転写調節因子ファミリーの保存領域を増幅しT-ベクターに組み込み、ブラスミドを精製しその塩基配列を決定する。いくつかの新規ホメオボックス遺伝子断片が同定されている。 (2)発現パターン解析による候補遺伝子の絞り込み このホメオボックス遺伝子断片をプローブとし、whole mount in situハイブリダイゼーションを行い、その発現パターンを指標に領域特異的に発現する遺伝子断片を同定する。少なくとも初期肝臓原基で発現する2種類の新規ホメオボックス遺伝子断片を単離された。そのうちのclone #1は発生段階23の肝臓において領域特異的発現パターンを示した。このことは本遺伝子が肝臓の発生過程において領域特異的分化に関与している可能性を示唆する。
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