研究概要 |
14年度は,ホールセルパッチクランプ法を用いて単離イモリ嗅細胞の膜電流及び活動電位を測定するため,まず新たにパッチクランプ用測定装置の立ち上げを行った。測定に必要となる顕微鏡,パッチクランプ用アンプ,及びオシロスコープ等は既に購入してあったが,パッチクランプ用データ取得装置(Axon Instruments),マイクロマニュピレータ(Narishige),データ記録用パソコン(Epson)及び顕微鏡用デジタルカメラ(Olympus)が必要であったため,本年度の研究費補助金から購入した。これらの実験セットの立ち上げには,研究支援者として雇用した成末憲治(ポスドク)により主に行われた。 実験セットの立ち上げの後は,嗅細胞細胞体の各種イオンチャネルが活動電位に及ぼす基礎データを記録した。すなわち,カレントクランプ状態において一定の振幅の持続的な電流注入に生じた活動電位を記録し,経時的に活動電位の頻度が減衰するメカニズムを解析した。具体的には,嗅細胞細胞体に存在する各種イオンチャネルの選択的なブロッカーを用いたり,細胞外液のイオン組成(Ca^<2+>イオンの除去等)を変化させることにより,各イオンチャネルが活動電位の頻度に及ぼす影響を検討した。この時,膜電位固定実験もあわせて行い,薬物が各イオン電流への影響も直接記録した。その結果,イモリの嗅細胞においては,細胞体に存在するCa^<2+>依存性K^+電流が活動電位の頻度順応を制御しており,匂い順応を修飾していることを明らかにした。こうした嗅細胞細胞体レベルにおける匂い順応は嗅繊毛レベルの順応より短時間のみ作用し,匂い順応をより強く作用させる機能があるものと考えられる。こうした研究成果は,Biophysical Journalに発表した。
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