基本的に、研究計画調書において計画された研究計画に従い研究を進めたが、平成14年度の作業の進捗状況を考慮に入れて多少の修正をした。すなわち、昨年度計画されていたが成果が不十分であった作業をまず進め、それが終了した後で本来計画されていた作業に取り掛かった。 本年度の前半においては、具体的な作業として、(1)『テアイテトス』の内容分析および研究動向の調査の継続、(2)『テアイテトス』の翻訳および注釈の骨子の完成、を行なった。これらの作業は未だ不十分であるので、来年度もさらに研究を継続させてゆく予定である。 後半においては、プラトンの知識論に対する総合的な研究に取り掛かるための準備作業を行なった。具体的には、初期対話篇におけるプラトンの知識論をもう一度精査し直し、後期思想とのつながりを、総合的に考察した。本年度の研究業績の大部分は、この作業の成果である。 また、以上の作業に加え、次年度の発展的研究に備えた準備作業にも着手した。計画では、『テアイテトス』に対する総合的研究の終了後、そこで得られた知見をもとに、後期思想全体における知識論の総合的な解明、および、中期のイデア論と後期思想との関連を研究する予定であるので、これらの作業を遂行しやすくするために、研究文献の収集および整理を行なった。とりわけ、『ソピステス』や『ポリティコス』などにおける分割法、『ピレボス』における存在論などをめぐる先行研究の調査を重点的に行なった。
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