研究概要 |
今年度に関しては、前年度に引き続き、生命論・複雑系・生命システム論、生命の倫理、フランス現代思想、思想一般に関する書籍を購入し、さらにコンピューター機器を購入する,ことによって研究に関する環境を整備した。 研究成果としては次の二つのものが挙げられる。 第一に、現場の生物学生命論が提示してくる生命に関する新しい像を従来の思想的知見を踏まえながら整理し、そこから新たな生命に関する包括的な視点を開く端緒を開いたことにあった。多様性・差異・異質性・進化・時間・環境と個体、こうした思想的な方向からの接近を図らなければ検討をなしえないいくつかの事態に対して考察を加えた。ドゥルーズやベルクソンといった思想家に対する考察も、こうした方向からさらに展開を図った。こうした思想的整理を踏まえた検討は、現場の生命科学に対しても一定の貢献を果たしうるものであると考える。第二に生命に関する倫理や技術に関して従来とられてきた生命倫理的な視点を乗り越え、そこに生命系のもつ政治性の問題を、おもに生政治学というヴィジョンの方向に展開する道を考察したことにある。フーコーやアガンベンなどに依拠して展開されるこうした検討からが、そこからは新たな生命の政治学を築き上げる萌芽を見出すことができる。
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