古代インドの祭式文献群であるヴェーダ文献(B.C.1200-)のうち、最古のまとまった祭式説明・解釈の記述を含むマイトラーヤニー・サンヒターが研究対象である。すでに2001年にドイツ、フライブルク大学で博士論文として提出した、この文献の前半部分のドイツ語訳と言語学的注釈について、さらに研究としての完成度を高めて出版に備えることが今年度の計画であった。また、この研究のために、私がサンスクリット語の原文を入力したデータベースを用いているが、このデータベースをインターネットを通じて公表し、世界中の研究者の利用に供したいと考えている。そのためのデータの最終チェックも今年度の課題であった。 このうち後者のデータベース完成に関しては、大学院生のアルバイトの協力を得て作業はほぼ終了した。協力内容は、サンスクリット語原文をもとに、入力したテキストを再度チェックして誤りや漏れがないかを確認することであった。2002年5月に研究打ち合わせのためオランダのライデン大学に出張したが(後述)、その機会に、インターネットを通じてインド・ヨーロッパ語の古代文献の入力テキストを供するTITUS(Thesaurus Indogermanischer Text-und Sprachmaterialin)プロジェクトを主宰する、ドイツ、フランクフルト大学のJ.Gippert教授と会談することができ、氏のプロジェクトの一環として私のデータベースを公表することが決まった。 ドイツ語訳と言語学的注釈の完成に関しては、京都大学のW.Knobl教授に、国外ではオランダのライデン大学の客員研究員A.Griffith氏に、主に協力して頂くことになった。Knobl教授とは、助言を受け議論をする場を定期的に設けてきた。これは今後も研究の出版まで続けられる。Griffith氏とはそのようなやり取りを書面で行うこととなっているが、まずは直接の会談によって今後の方針を決めるべく、咋年5月に氏をオランダのライデンに訪ね打ち合わせを行った。以上のように、研究の出版に向けての準備が進められた。
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