科学研究費補助金に基づく当研究「環境倫理学の最新動向と日本における応用可能性の研究」では、その初年度に当たっての主要課題の一つは、欧米の環境倫理学における議論の展開のサーヴェイを継続することであった。その成果は「実践に定位する環境倫理」と題して日本倫理学会において口頭発表がなされた(2002/10/12)。これに関連して、動物の倫理的扱いに関する欧米の最新の動向も踏まえた日本実験動物学会のシンポジウムにも参加し(5/25)、知見を広めた。 今年度のもう一つの大きな課題は、日本における環境保全活動の一例として、龍谷大学の教員が中心となって行っている滋賀県・瀬田丘陵の里山(「龍谷の森」)の保全活動に参加・調査することであった。数回のシンポジウム・研究会・実地調査への参加を経て、日本における里山・里地のあり方が、従来の抽象に偏しがちな環境倫理学の議論を越えて、あるべき自然-人間関係についての真に実践的なモデルになりうる、という当初の見通しはいつそう検証された。他に兵庫県・六甲山の里山林回復に関するセミナーに参加した成果なども踏まえて、来年度は論文の形で発表できるようさらに研究を深めるつもりである。 他に、応用倫理学における環境倫理学の隣接分野である、生命倫理学の議論のサーヴェイにも取り組み、環境倫理学における方法論を批判的に見直す契機とすべき考察を深めた。
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