当研究の2年目に当たる今年は、当初の計画通り、海外と日本の環境倫理学・社会学の文献を「環境プラグマティズム」の立場から読解、再解釈して、別記の共著書や雑誌寄稿の形で発表することに中心が置かれた。その際、単にテクストの解釈に充足するのではなく、理論の有用性を重視するプラグマティズムの立場に整合的に、里山保全活動への継続的参加から得られた知見を論文に生かすことに特に留意がなされた。学問の実践性、というテーマに関する考察については、環境社会学会共催による沖縄大学でのシンポジウム、「学問における実践とは-ローカリティ・当事者性の視点から-」(2004.2.8)への参加から得られるものが大きかった。我々人文系の研究者は、はたして紛争の当事者からの要求にどれだけ応えることができるのか、あるいは良き「よそ者」である当事者自身として、どのように現実問題にかかわってゆける、あるいはゆくべきなのか。アメリカの環境プラグマティズムの問いかけとも重なるこの重大な問題を、この日本の文脈でさらに考え続けることが来年度へ向けてのさらなる課題となるであろう。 当初の計画にあった、海外の学会への参加は諸事情により果たせなかったが、現実的な問題からの倫理(学)的問いの立ち上げ、という点から、「食」をめぐるテーマの研究を進め、その成果を発表できたのは、今年の一つの成果であった。単に歴史的・文化論的な従来の食の研究にとどまらず、現代われわれ特に都市生活者はどのように食とかかわり続けるべきなのか、という倫理的テーマの追求は、現実的・実践的な倫理学の構築を目指す当研究にとっては、きわめて重大な課題である。
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