本年度は、3年にわたる研究の第2年目として、昨年の基礎作業の継続と、一次資料の発掘を行った。 実績は主に次の3点にまとめることができる。(1)両大戦間のヴァレーズの動向について、論文「E.ヴァレーズにおける政治的前衛と芸術的前衛の結合」を東京音楽大学紀要に発表した。ここでは、両大戦間のアメリカにおける社会主義の状況、ヴァレーズの芸術活動および政治活動、そして左翼人脈との関係を詳細に整理し、研究の中間発表を行なった。(2)アメリカのニューヨーク公立図書館において、大量の自筆手紙、自筆譜などを発掘し、その調査を行った。とりわけ指揮者・作曲家のオットー・ルーニングとの往復書簡を通じて、ヴァレーズの組織論について様々な情報を得ることができた。また、1915年から1965年までの「ニューヨーク・タイムズ」から、ヴァレーズ関係の記事120点を調査し、当時の社会的文脈を正確に把握することができた。その結果、仮説と同じく、1930年代のヴァレーズが社会主義者として認知されていたことが明らかになった。(3)アメリカのノースイースタン大学教授であるジュデイス・ティック氏との会見をもち、当方の目論んでいる成果についてのディスカッションを行った。その結果、以前にもまして、研究方向への確信を持つにいたった。また、教授から様々な情報や示唆を得るととができた。 以上の成果を踏まえた上で、最終年度となる来年度にはさらなる資料調査を行うと共に、これまでに収集した資料や得られた成果を整理し、最終的な結論を導きたい。
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