上記の研究課題に沿って、平成14年9月2日から、9月23日にかけて、パリ(フランス)において現地調査し、作品の実地研究、および資料収集を行った。とくに、フランス極東学院付属図書館とギメ国立アジア美術館、同美術館付属図書館を中心に調査した。前者の機関が保管する古文書においては、とくに旧フランス領インドシナの考古学と植民地行政との関わり、そして、植民地時代の文化財行政の関連牲の深いものを収集し、整理した。研究を進めるなかで、考古学調査、および美術作品研究という学術的活動も、同時代の植民地政策と深い関係にあったことが次第に明らかとなってきている。その成果の一部は、平成14年12月刊行の『日本研究』<26号、国際日本文化研究センター)に、「20世紀前半期におけるアンコール遺跡の考古学と仏領インドシナの植民地政策」と題して、盛り込むことができた。また、後者の機関では、保管されているカンボジア美術の来歴を跡付ける調査を行った。現在、当図書館で収集した資料や、日本の諸研究機関が保有する資料などと照合しながら、事実関係の裏づけ作業を行っている。加えて、両機関において、インドシナの周辺諸国との関係、とりわけ中国と日本との関わりを示す資料も収集した。フランスの極東考古学、美術史編纂の作業が、インドシナを個別的に扱っていたのではなく、極東の周辺国との関係、において成立していたことを重視する必要が生じてきたからである。この点に関しては、平成15年3月26日に東京文化財研究所において、調査の経過報告を口頭発表した。当該研究が対象とする国々の美術作品を分析する方法に関する発表であったが、その内容の一部は、すでに平成15年2月の『あいだ』誌(86号)に発表している。また、平成16年1月にフランスで刊行予定の書籍(共著)に、研究成果の一部を盛り込んだ論文を「アンリ・フォシヨンとアジア研究」と題して現在、執筆中である。
|