研究概要 |
本研究の目的は、(1)リスクに対する情動反応とリスク認知との関係を解明したうえで、(2)リスクに関するメッセージが与えられることにより、認知的、情動的側面にどのような変化が生じ、その後にどのようなリスク対処行動が意図されるようになるかを明らかにすることであった。平成14年度は、リスクの認知過程において情動反応を引き起こし、リスク認知の高低に影響を及ぼすと考えられる要因のうち、リスク情報の表現形式に注目して研究を行った。実験では、同じリスク情報でも、確率表現と頻度表現では、その主観的評価過程において生じる情動反応の強さが異なり、頻度表現では個々の事例をイメージするために、確率表現に比べて強い恐怖や不安が生じるという仮説をたて、これを検証した。実験の結果、頻度と確率の違いは明確に示されなかったが、単にリスクは5倍であるという表現によって、リスクの主観的評価がより高まる結果が示された。この成果は、2002年7月に開催された第49回北海道心理学会(タイトル:リスクの表現形式が主観的リスク評価に及ぼす影響)で報告された。平成15年度は、リスクに関する情報がメッセージとして提供された場合に、リスクに対する認知がどのように変化し、どのようなリスク対処行動につながるかを調べた。実験では環境ホルモンの健康リスクを題材として行われ、結果として「不安」がリスク認知を高め、これが実行しているリスク対処行動の数の多さにつながっていることが示された。この成果は2003年7月にウィーンで開催された第8回ヨーロッパ心理学会(タイトル:A structural analysis of risk perceptions of environmental endocrine among Japanese : a comparison of personal risk, societal risk, and risk for the next generation.)で発表された。
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