研究計画に従い、本年度は運転場面のシミュレーションを行うための環境整備を行うとともに、実際の運転に近く、運転の困難度等の条件をコントロール可能な課題の作成を行った。環境整備については、大阪大学人間科学部内の実験室に、スクリーン3面とプロジェクタ3台、およびこれらに画像を提示するための特殊なビデオボードを搭載したパーソナルコンピュータからなる実験装置を設置した。この装置では被験者から見て最大108°の範囲に映像を提示することができる。また、小型のノートパソコンを導入し、被験者前面に映像を提示するためのコンピュータとクロスLANケーブルで接続した。このノートパソコンの液晶パネルは、一般的なカーナビゲーションシステムで用いられる車載ディスプレイとほぼ同じサイズであり、カーナビゲーションを模擬する課題を行う目的に適している。 課題については、現時点でまだ開発途上であるが、運転課題としては運動する視覚的ターゲットをスクリーン上に提示し、それを追従するように操作するトラッキング課題を作成した。また、ランダムな時間的周期で、先行車のブレーキングによる車間距離の短縮や、横方向からの飛び出しといった緊急事態を模擬する刺激を提示する。またカーナビゲーション課題としては、ディスプレイに時々提示される文字や記号を読み取るという課題を準備し、運転課題内で提示される文字・記号との照合を行うこととした。 また、メンタルワークロードの評価法については、上記機材を用いない実験と調査を行った。具体的には、主観的評価法であるNASA-TLXによる課題の心的切り替えによって生じる負担の測定の実験、および、日常的な生活の中での注意コントロールにかかわる質問紙の作成を行った。
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