研究概要 |
本研究は,自伝的記憶の検索過程とその神経的基盤を明らかにすることを目的としている.平成14年度は,自伝的記憶に関する2つの調査を行い,更に,平成15年度から本格的に開始する,自伝的記憶検索中の脳波測定の予備実験を行なった.調査1では,自伝的記憶の検索と想起された記憶の視点について調査を行った.記憶内の自分が現在の自分と一致しているかどうかによって,記憶の視点が異なることが示された.記憶内の自分が現在の自分と一致している場合には,観察者と行為者の視点の報告はほぼ同数であったが,記憶内の自分が現在の自分と一致していない場合には,観察者の視点の報告が行為者の視点の報告よりも多かった.また,記憶内の自分が現在の自分とは一致しないと判断された出来事の記憶において,観察者の視点で想起する方が,行為者の視点で想起するよりも,出来事を実際よりも最近に感じていることが示された.調査2では,自伝的記憶の検索とその出来事の原因帰属について調査を行った.小学校入学前,小学校時代,中学校時代,高校時代,大学時代の5つの出来事について想起を求めたところ,全体的に,他者や状況に原因を帰属するよりも,自分に原因を帰属する方が多かった.また,大学時代の出来事の記憶において,記憶内の自分が現在の自分と一致している場合,他者や状況に原因を帰属する場合の方が,自分に原因を帰属する場合よりもその出来事を実際よりも最近に感じていることが示された.更に,自伝的記憶を検索中の脳波を測定するための予備実験を行い,実験方法や分析方法の確認を行った.
|