研究概要 |
本研究は,自伝的記憶の検索過程とその神経的基盤を明らかにすることを目的としている.平成15年度は,自伝的記憶の検索に関する調査(調査1・調査2)と,自伝的記憶検索中の脳波測定(調査3)を行った. 調査1では,最近経験した感情的出来事を3つ想起し,記憶評定を行った.3ヶ月後に,同じ被験者に対して調査2を実施した.調査2では,調査1で記入した3つの出来事について再度記憶評定(記憶鮮明度,想起頻度,重要度,記憶の視点,原因帰属,過去の感情,現在の感情)を行い,自伝的記憶の時間的体制化について検討した.その結果,現在肯定的に感じられている出来事は,現在否定的に感じられている出来事よりも,主観的に実際よりも最近に感じられることが示された.過去の感情よりも現在の感情が自伝的記憶の主観的時間的体制化に影響を及ぼすことが示唆された. 調査3では,過去10年間に起きた事件を手がかりとして,その事件に関する自伝的記憶の想起を行い,検索中の脳波を測定した.想起の視点(Field, Observer)の回答も求めた.タキストスコープに過去の事件名を呈示し,事件に関する自伝的出来事想起までの想起時脳波,保持中の脳波,忘却中の脳波(slow wave)の測定を行った.想起の視点別に,想起時,保持期間,忘却中の脳波を加算平均して分析したが視点の効果は有意ではなかった.また,H16年度に予定している,自己概念と記憶に関する脳波の予備実験を行なった.
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