研究概要 |
視覚パターン認知に及ぼす加齢の影響を生涯発達的観点から検討し,モデルの構築を行った.具体的には,幼児・成人・高齢者を対象に,形・色・模様からなる図形を複数同時呈示し,共通属性を抽出させた.その際,アイマークレコーダー(ナック社製・EMR-8)を使用し,パターン認知の処理過程の,1)情報入力時2)内的操作時の2つの処理に焦点をあてて解析を行った.その結果,形属性抽出は年齢に関係なく,高成績で抽出可能であったが,模様と色抽出は年齢によって成績に有意差がみられた.特に低年齢児と後期高齢者は色抽出が低成績であった.しかし,低年齢児も後期高齢者も色は知覚できていたことから,色抽出が低成績であったのは,色属性間の共通性に気づかず,課題に利用できなかったものと考えられる.以上の結果より,幼児期初期と高齢期後期には,パターン認知において,属性や特徴による階層性もしくは順序性があることが示唆された.また,抽出される属性によって,生涯発達的変化は異なることが明らかとなった.加えて、幼児期初期に獲得された能力(形)は高齢期後期まで残り,幼児期後期に獲得された能力(色)は高齢期初期に衰退するといった,"last in, first out"現象(Jackson,1881,reprinted in Taylor,1958)が,パターン認知能力の生涯発達的変化で見出され,新たなモデルとして提言した.また,アイカメラデータ解析により,後期高齢者は,重要情報に注意は向くがその情報を課題に利用できないことが示唆された.さらに,低年齢児と後期高齢者に対して,訓練を行えば直後には先述の課題が達成されることも明らかとなった.
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