研究概要 |
1.実験研究 広汎性発達障害児を対象に,その認知機能を検討するための心理学実験を行った.特に,複数の情報が共存する場面での認知機能の検討のため,逆ストループ課題を元にした実験研究を進めている. 課題として,色名単語の判断を用い,単語自体あるいは単語の上または下へ呈示するパッチに色をつけた場合の,単語判断への影響を検討した.これは,藤田・川上・行廣(2002)の実験の条件等を整備し,より詳細なデータを収集することを目指している.実験の結果,広汎性発達障害児でも逆ストループ干渉が見られた.さらに,大学生による対照実験では,パッチへの着色は単語自体への着色よりも影響が小さかったが,広汎性発達障害児では,パッチへの着色からの干渉も大きいという傾向が見られた.また,単語/パッチへの着色の干渉量およびその差には個人差が大きかった.これは測定誤差である可能性もあるが,他の認知指標との関連から,広汎性発達障害児の集団内での個人差の要因検討も進めていく予定である. 2.シミュレーション研究 上記実験研究に関連したストループ干渉,および,既にデータを収集している虚記憶等の実験に関連した,コネクショニストモデルによるシミュレーション研究の文献調査を行っている.また,発達障害およびその他の認知障害を,コネクショニストモデルによってシミュレートした研究に対する文献検討も進めている.これらのシミュレーションモデルを参考として,発達障害の特徴をコネクショニストモデル内で表現することを次年度に向けた検討課題と考えている.
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