本研究では、人工物を含めた顔の形態的特長と可愛らしさの関係について検討するために、顔画像の評定実験を行った。前年度の研究結果から、人工物を含めた対象の可愛らしさの認知には、生物か非生物かといった現実感が深く関わることが推測されていた。そこで、現実感について検討するために、ヒトの幼児および犬の顔画像について写真と写真をスケッチに変換して非生物化した刺激を用意した。さらに、目の形状を大きさ、左右眼距離および縦横比について段階的に操作し、これらの刺激についての可愛いらしさ評価を求めた。その結果、原画像においては、最も可愛らしさ得点が高かったが、スケッチは写真よりも、目の操作に伴う可愛らしさ得点の低下が抑制されていた。このことは、非生物であるといった認識がトップダウン的に働き、目の形態操作によるデフォルメを受容できるようにしたと理解できた。次に、これらの結果を確認するために、異なる画像を用いて同様の実験を繰り返した。この画像では、原画像よりも目が小さく、両眼間距離が近い画像の方が可愛らしさ得点は高かった。このことは、顔のパーツ配置において、可愛らしさを誇張する配置があることを示唆した。また、写真とスケッチの比較においては、前回の結果を支持した。 また、昨年度に引き続き、可愛らしさに関わる認知過程を探るべく脳電位測定の予備実験を実施した。しかし、可愛らしさ評価の異なる刺激条件間に顕著な違いを検出することが難しく、前述した評定実験による結果をモデル化して、効果的な条件設定を行う必要があると考えられた。
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