研究概要 |
二年間の調査によって,616名のデータを得た。調査協力依頼の困難な教員対象の調査としては、意義のあるデータを得たといえる。有効なデータを用いて,まず,ストレッサー尺度,コーピング尺度,バーンアウト尺度について,評定傾向からみた項目の妥当性,因子分析,信頼性の検討を実施した。その結果,まず,ストレッサー尺度については,部活動に関する項目や家庭訪問に関する項目についてストレッサーの経験頻度が低かった。日本における教師のストレス研究として先駆けである勝倉(1995)はこれら項目を尺度作成時に採用しているが,本研究の結果は,勝倉(1995)の研究当時からの時代の変化が伺われた。因子分析による検討では,他因子にも高い負荷量を示したため標準的な手続きとして削除されたものの,生徒指導と同僚教師との関係に関する因子双方に高い負荷量を示すものなどがみられた。このような結果から,同僚教師との意見の不一致や連携が生徒指導におけるストレスとして経験されている可能性が推察され,日常的なストレスを測定する困難さを示す例であると考えられた。コーピング尺度については,先行研究(五十嵐,2001)と同様な因子構造がみられた。バーンアウト尺度については五十嵐(2001)を参考に,フロア効果を敢えて無視して因子分析を実施したところ,Maslach(1976)の提唱したバーンアウト概念において重要な脱人格化に相当する因子が抽出されるなど,興味深い結果を得ている。現在,精神的健康の程度とこれら尺度の関連を検討することによって,精神的危機とみなしうるプロフィール得るために,調査冊子配布時に同時に回答を求めた標準化された尺度との検討を進めている。
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