学習内容の指導に関しては、認知心理学、認知工学の視点から、多くの指導案がこれまで提案されている。しかし、学級経営に関して認知心理学的視点のものは少ない。本研究では、教師が学級経営を円滑に行っていくために、RCRT(Role Construct Repertory Test)を土台にして、教師・児童間の適応を促す技法を開発するのが目的である。 RCRTはG.A.Kellyが提案した手法で、被験者がいかなる様式で世界を認知しているかを測定するものである。測定する側が与えた枠組みではなく、測定される側がもつ固有の認知枠組みを測定することができる点で、きわめてユニークな測定手法である。すなわち、教師が学級経営を行う際にクラスの構成員たる児童をどのような固有の認知様式でみているのかを把握することが可能である。こうした技法は「教師版RCRT」として、多くの研究者に使用され、一定の効果を生んでいるが、いくつかの利用上の問題点がある。その中でも最大の問題は、RCRTが被験者に非常に負担がかかり、また被験者と測定者との間に十分なラポールを形成していないと測定自体が不可能である点である。 上記の問題を解決するため、実際に現職の教員と十分にラポールを形成した上で、教師版RCRTのどの部分が現職教員として負担であるのか、どこを改良すればよいのかを忌憚なく指摘してもらう調査を本年度は行った。現在までに二名の現職教員から改良した教師版RCRTを採集し、その分析を完了している。来年度、さらに二名の現職教員のRCRTのデータを増やし、これらをもとに教師に負担のかからぬRCRT技法を開発させる予定である。
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