研究概要 |
近年、青少年による凶悪な殺人事件等の不適応行動が社会問題となっており、その原因については様々な議論があるが、この問題を実際に検討した研究は少ない。そこで、本研究では、2次的データ分析(平成14年度)、調査研究(平成15年度)、パネル研究(平成16年度)によって、青少年の不適応行動の生起過程を検討することとした。 平成15年度は、青少年の不適応行動の原因として、先行研究(Suzuki et al.,2004)から示唆された要因と平成14年度の2次的データ分析から示唆された要因、不適応行動を測定し、どの要因が実際に不適応行動に関係しているのかを検討した。具体的には、先行研究(Suzuki et al.,2004)から示唆された要因として、「メディア接触」「家庭でのコミュニケーショシ不足」「不公平感」等、平成14年度の2次的データ分析から示唆された要因として、「小さい頃の一人遊び」「けんか早い友人の存在」「日常的な対人的/達成的ネガティブイベントの有無」等を測定した。不適応行動に関しては、攻撃行動の頻度、攻撃性(短気,敵意,身体的攻撃,言語的攻撃)を測定した。また、不適応行動に関する回答への影響を考慮し、社会的望ましさについても調査項目に含めた。調査は、大学生男女を対象として実施した。性別と社会的望ましさを統制し、上述の要因と不適応行動の関係を検討したところ、日常的な対人的/達成的ネガティブイベントが多いほど攻撃行動が多いという結果が示された。また、小さい頃の一人遊び経験、けんか早い友人、日常的な対人的ネガティブイベントが多いほど、あるいは不公平感が高いほど攻撃性が高いという関係も示された。メディア接触に関しては、テレビ視聴が多いほど攻撃性が高いという関係が示されたが、テレビゲームやインターネット使用、本やマンガへの接触と攻撃性との関係は見られなかった。
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