今年度はAD/HD的傾向のスクリーニング・テストの開発を行った。ジョージア大学で使用されているチェックリストをもとにAD/HD傾向質問紙を作成した。この質問紙の妥当性を検討するために、大学生の精神的健康度のチェックリストであるUPI、標準化された青年を対象とした精神的健康度の質問紙であるYSR、アメリカ合衆国で標準化されて用いられている注意機能の検査であるIVA-CPTを実施した。また、検証的因子分析により構成概念妥当性を検討、さらに尺度ごとの信頼性(内的整合性)を検討した。 AD/HD傾向質問紙は7つの下位尺度に、UPIの項目は、平山ら(1990)の報告にもとづいて8尺度に分類した。いずれの下位尺度も十分な内的整合性を示していた。 AD/HD傾向が精神的健康度も関連があるか検討するために、それぞれの下位尺度得点間の相関を求めた。最も高い相関が見られたのは、AD/HD傾向の「不注意」とUPIにおける「抑うつ」であった。「不注意」は他にも「こだわり」、「抑うつ」、「気分変動」、「自律系症状」の4尺度と相関を示した。一方、AD/HD傾向における「多動性」のみであった。YSRとは「注意・社会性の問題」、「非行的行動」、「攻撃的行動」などと多くの下位尺度が高い相関を示す一方、「不安・抑うつ・内向」とも比較的高い相関を示した。IVA-CPTとは「不注意」尺度が「反応統制」、「持続性注意」のいずれの指標とも弱い相関を示す一方、質問紙の「多動性」尺度がIVA-CPTの「多動性」指標と弱い相関を示した。以上のことから、今回開発したAD/HD傾向質問紙はADHD的な行動・認知特性がある大学生のスクリーニング・テストとして十分な妥当性を示していたと言える。
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