研究概要 |
本年度は高次認知機能の働きを制限する方法についての基礎的な研究を中心に行った. 1.前頭葉機能とワーキングメモリーの関連 前頭葉機能とワーキングメモリーの関連について,前頭葉機能(実行機能)の測定に用いられるウィスコンシンカード分類テスト(WCST)をワーキングメモリーの構音ループの働きを抑制した群(構音抑制群)と中央実行系の働きを抑制した群(トーン探索群)に実施し比較した.なお,その際,中央実行系が注意(覚醒度)と関連していることから,注意の個人差がWCSTの成績に影響するのではないかと考え,個人差を統制した.その結果,先行研究ではWCSTの成績低下と構音ループの抑制を指摘していた(Dunber & Sussman,1995)が,本研究では先行研究の結果は再現されず,注意の個人差がWCSTの成績に影響することが示された. 2.無関連言語音効果と認知機能 無関連言語音効果と注意の個人差の関連を検討した.系列再生のような比較的単純な課題の場合には無関連言語音は注意の個人差に関わらず一定の妨害効果を持つ.しかし,そもそも系列再生成績は注意の個人差に影響されることが示唆された. 3.アラウザル・チェックリスト(気分形容詞チェックリスト)短縮版の作成 高次認知機能には個人差が存在し,さまざまな介入(例えば,無関連言語音の挿入)に対する反応にも個人差が存在する.1,2で示されたように注意の個人差が一般的に影響することが予想される.そこで,注意の個人差との関連が想定される覚醒度について測定する方法として簡便な気分形容詞チェックリストを整備した. 4.その他 幼児を対象とした実験を行った.
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