研究概要 |
近年子どもの勉強嫌いや学習不適応といった、学習に関わる動機づけの欠如が大きな教育問題となっている。本研究では、このような児童・生徒の動機づけについて、特に最近の動機づけ研究で注目を集めている社会的目標(Social Goal)の観点から検討した。社会的目標に関わる研究は、教室という複雑多岐に渡る対人関係や社会的文脈における学業達成の特質を反映しうるという特徴をもつ。とりわけ、小集団学習などの対人的相互作用を媒介した学習場面において、社会的責任目標は有意義な効果をもつことが考えられる。 本研究課題では、協同学習活動における社会的責任目標の効果について検討する。特に本年度の研究では、以下の2つの問題に焦点を当て、検討を行った。 1.児童・生徒の社会的責任目標と学習動機づけ、共感性、学級適応の関連 小学5年生228名と中学2年生188名を対象とした質問紙調査を実施し、児童・生徒の社会的責任目標と学習動機づけ、共感性、学級適応の関連に関して検討した。分散分析の結果、社会的責任目標は学級適応、理科への動機づけ、理科への興味・関心に対して積極的な影響を及ぼしていた。また、認知的共感性もこれらの変数に対して有意な影響を及ぼしていた。これらの結果は、子どもの社会的コンピテンスと学業成果とが相互に関連することを示唆していた。 2.生徒の社会的責任目標が協同学習における相互作用に及ぼす影響 社会的責任目標が協同学習における相互作用に及ぼす影響について検討するため、中学1,2,3年生694名を対象とした質問紙調査を行った。共分散構造分析の結果、社会的責任目標の下位尺度のうち、規範遵守目標は学習への参加・理解に促進的な影響を及ぼしており,一方,向社会的目標は,友人との交流に対して積極的な影響を及ぼしており、社会的責任目標の2つの下位目標による異なる影響過程が見出された。
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