本研究は、平成14年度からの継続であるが、平成14年度に明らかとなった北米のスクールカウンセラー養成課程での訓練方法をもとに、日本でのその応用可能性について今年度は主に研究を行った。まず、学校現場での教育相談の機能を明らかにし、教育相談の分野で可能であることを実践した。例えば、教育相談担当の教員による特別活動内での「ピア・サポート・プログラム」の実践や、体育科の中での「体ほぐしの運動」の実践や、授業全体での教育相談的なかかわりをするティーム・ティーチングの実践などを行った。そして、これらの実践の効果が実証し、それをもとに2年間の大学院での訓練の過程で、現職教員の意識・態度がどの程度、教育相談的、あるいは、カウンセリング・マインドを持てるようになるかについてもアンケートにより調査を行った。その結果、教育相談や臨床心理学に関する講義や演習を受けることにより、かなりの意識・態度の変容が見られることが明らかとなった。これは、教師とカウンセラーのアイデンティティの統合によっても示された。これは、性別・校種・教職経験年数などに関係なく明らかであった。さらに、実際に心理・教育相談室でカウンセラーとして不登校や不適応の児童・生徒あるいは、その保護者の相談事例を個別に担当することによって、その意識・態度の変容は、大学院修了後も維持されることが明らかとなった(投稿中)。つまり、実際の事例を担当し、個人スーパービジョンを受け、事例検討会で発表し、そのケースをまとめ考察することにより、講義や演習で学んだ理論が自らのものとなり、学校現場に復帰した後も、カウンセラーとして教育相談を担当することが可能になっているということである。今年度のこの結果をふまえ、来年度は、現在の大学院教育の中で、より効果的な、また他の大学院にも一般化が可能なシステマティックな訓練方法を明確にしていく予定であり、その効果を検証したい。また、2年間という大学院だけでなく、短期間の研修でもその訓練が可能かどうかにもついても検討していく予定である。
|