研究概要 |
本研究は、平成14年度からの継続であるが、平成14年度にはスクールカウンセラーの訓練では先進国である北米のスクールカウンセラー養成課程での訓練方法を調査し、平成15年度には実際に日本でスクールカウンセラーが派遣されている中学校の教員・保護者・生徒を対象にアンケート調査を行い、スクールカウンセラーに求めることを明らかにし、また、実際にスクールカウンセラーとして派遣されている者に対しては、学校現場で直面している問題点・困難点などについてアンケートや面接で明らかにしてきた。平成16年度には、これらの結果をふまえ、北米のスクールカウンセラーの訓練方法に基づいて、臨床心理士を目指す大学院生のカウンセリングの資質の向上を目指した実習内容を検討し、その効果を検証した。また、実習には、教育相談担当の現職教員もその対象として含んだ。具体的には、(1)教育相談担当の教員による「ストレスマネージメント学習プログラム」の実践(カウンセリング学会)、(2)養護教諭による保健室登校児童生徒への遊戯療法的かかわりの効果についての実践(中四国心理学会)、(3)教育相談担当の教員による児童理解のためのアンケート調査(カウンセリング学会、鳴門教育大学学校教育実践センター紀要,第19号)、(4)教育相談担当と生徒指導担当の教員の問題行動に対する意識の面接調査、(5)臨床心理士を目指す大学院生の資質(共感性・母性父性について)についての研究(中四国心理学会)、大学院生のカウンセリング実習による能力向上の効果についての研究(鳴門教育大学研究紀要,第20巻)などを行った。 本年度のこれらの結果から、スクールカウンセラーを目指す大学院生は不登校のケースを担当したり、スクールカウンセラーの補助として学校現場に入ったり、個人的なスーパーバイズを受けたりすることが効果的であることが明らかとなった。しかし、現在の訓練方法では、カウンセラーとしての充分な自己効力感を大学院修士課程の2年間で持つことは難しく、さらに効果的な訓練方法を検討することが課題となった。臨床心理士を目指す者は、修了後に、医療、教育、矯正等、様々な分野の職に就くことが多く、スクールカウンセラー志望の者のみに焦点を当てた訓練を大学院修了後、スクールカウンセラーとして派遣される前に行う必要がある。また、教育相談担当の現職教員は、反社会的な問題行動(非行など)を持つ生徒に対してはある程度自信を持った関わりをしているのに対して、非社会的な問題行動(不登校など)を持つ生徒に対しては、どのような関わり行ったらいいのかよくわからず、自信もなく、効力感もあまり持っていないことが明らかとなった。現職教員の求める具体的な対応方法についての研修のあり方などについても今後の課題として明確になった。これらの点については今後も研究をしていく予定である。
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