本年度は、通常の保育園に在籍する発達障害乳幼児の在籍状況、および各地域における乳幼児発達支援状況についての実態調査を実施すると同時に、福岡市地域における複数保育園において、保育士支援、および発達に困難を抱える園児の支援を臨床的に行うことを通して、現在、発達に困難を抱える乳幼児の在籍する保育園・保育所等が事実上抱える保育場の問題点や、各保育士の感じている保育上の難しさ、あるいは、今後の発達障害児保育を実施するに当たり、保育士が望むことなどについて検討した。特に、全国各地の保育園に勤務する保育士達が、保育上、なんらかの困難を感じる園児の存在を高い比率で報告している一方、そうした園児の保育方法に関する具体的なアドバイスを受けることが出来る機会を持つことが非常に少ないことが浮き彫りになり、保育支援システムを構築する上での手がかりを得ることが出来た。さらに、臨床的実践の中から、保育士が具体的に発達障害児についてのアドバイスを受けることができる存在として、専門機関を希望しているものの、その頻度は年間6回以下と極めて少なく、実際上、有用な支援を受けることが極めて困難な状況に置かれていることも明らかとなった。発達障害という診断名を有しないものの、事実上、発達や社会性に困難を有する乳幼児が通常の保育園に多数在籍している現状から、専門機関と保育園との連携が必要不可欠であることを本研究は明らかにした。
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