研究概要 |
乳幼児と母親は,どのようにコミュニケーションを成立させているのであろうか。母親は,前言語期の乳児に対して,乳児の意図や行為を「代弁」することで,コミュニケーションを成り立たせている。これまでの研究において,母親の発話を4つの代弁形および非代弁に整理し,生後0〜9ヶ月までの代弁の頻度の変化について検討してきた。 今年度は,発話の形式だけでなく,機能にも着目した。先行研究では,母親の発話の機能を分析するための適当なカテゴリが見いだせなかったため,まずは,発話の機能についてのカテゴリ生成をめざした。母親の代弁について分析した同じデータ(生後6ヶ月の母子)を用いて,母親の発話の機能の側面から,KJ法を用いて整理した。その結果,4水準の樹形図が得られた。最上位水準は,"非伝達"-"伝達"という2つのカテゴリから構成され,第二水準は,"独り言","あやし"(以上,"非伝達"の下位),および,"問いかけ","応答","方向付け","促進"(以上,"伝達"の下位)の6カテゴリから構成された。 さらに,これまで分析を行ってきた"代弁"と,今回分析を行った"機能"との関連を検討した。対象となったのは,生後6ヶ月の1組の母子のコミュニケーションである。その結果,今回の母親の発話では,"非伝達"にあてはまるデータが少なく,分析に耐えられるものではなかったが,"伝達"については,とくに,"促進"において,母親は代弁を多く用いることが見いだされた。ここから,代弁かどうかという発話の形式は,発話の機能と関連があることが示唆された。ただし,事例的分析であったので,来年度以降,他事例および他月齢についてデータの分析を進めていきたい。
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