研究概要 |
乳幼児と母親は,どのようにコミュニケーションを成立させているのであろうか。乳幼児は,ことばを獲得する以前から,母親や身近なおとなとのやりとりを成立させている。そのひとつの形式として,本研究では,母親による子どもの「代弁」に着目した。母親は,前言語期の乳児に対して,乳児の意図や行為を「代弁」することで,コミュニケーションを成り立たせている。これまでの研究において,母親の発話を4つの代弁形式および非代弁に整理し,生後0〜9ヶ月までの代弁の頻度の変化について検討してきた。 今年度は,さらに分析を進め,生後15ヶ月までの母子のやりとりにおける「代弁」の発達的変化について検討した。とくに,12ヶ月から15ヶ月への変化は顕著であり,それまで増加傾向にあった母親の代弁が減少する。そして,その背景には,子どものコミュニケーションの発達があることが見いだされた。具体的には,(1)指さしが対象を指し示す機能を持つようになる,(2)自分では発語できなくとも,ことばを言われて理解できる理解語が増加する,(3)共同注視の成立場面が増加する,(4)やりとりのタイミングにあった発声が増加するなどの点で,子どもの変化が観察された。ここから,子どもがやりとりを理解しているように見えることによって,母親子どもを「やりとりの相手」として捉えるようになったのではないかと推測される。それゆえ,代弁が減少したのではないだろうか。来年度以降,他事例および他月齢についてデータの分析を進めていきたい。
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