「暗黙の自尊心」を、ストループ効果を応用した方法(実験1)およびプライミング効果を応用した方法(実験2)で測定する可能性を探った。同一被験者に実験1、実験2の順番で実施した。最初にアナグラム課題を実施して、成功あるいは失敗のフィードバックを与えた。その後、いくつかの質問(マニピュレーション・チェック、原因帰属など)に回答させた後、認知実験を行った。 実験1では、パソコンにポジティブ語、ネガティブ語、記号(×××)を3色(赤、緑、青)のうちのいずれかで呈示して、その色についてキーボードでできるだけ正確に早く反応するように求めた。単語の意味が個人に重要である(あてはまる)場合にストループ効果によって反応が遅くなるため、成功群ではポジティブ語、失敗群ではネガティブ語の色名判断が遅くなるという仮説を立てた。結果は、失敗群でネガティブ語の反応が遅くなったものの、成功群でポジティブ語の反応が遅くなるという結果は得られなかった。平均反応時間は、失敗群でネガティブ語>記号>ポジティブ語、成功群で記号>ネガティブ語>ポジティブ語であった。 実験2では、プライム語として自己関連語(私、自分)もしくは他者関連語(彼ら、他者)を200ミリ秒間呈示し、続けて呈示されるポジティブ語かネガティブ語について意味の肯定性をキーボードでできるだけ正確に早く反応するように求めた。プライム語と判断語が意味的に関連している場合に処理が促進されるため、成功群では自己関連語の後のポジティブ語の判断が促進されるのに対して、失敗群では同様に自己関連語の後にネガティブ語の判断が促進されるという仮説を立てた。結果は、成功群では自己、他者いずれのプライム語でもポジティブ語の反応が早く、また失敗群では自分に関するプライム語の後でポジティブ語に対する反応が早く、仮説とは一致しなかった。
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