研究概要 |
本研究では,Loevingerの提唱した自我発達理論に基づき,日本の青年期における発達傾向,特に,20歳前後で自我発達水準がどのような傾向を持つのかについて,縦断的に検討した。Loevinger(1985)が述べた成人初期に自我発達水準が安定する傾向については,日本においてはもちろんのこと,英語圏においても,縦断的にはほとんど検討されていない。 本年度は,専門学校生を対象とし,入学時とその1年半後にWUSCTを実施し,その変化を検討した。その結果,変化が見られないと言えるだろう。ただし,この傾向は,男女で異なる可能性があると思われた。自我発達水準において,女子の方が変化のない割合が高かった。この傾向について考察してみると,入学時は,新しい文脈に対応している時期であり,新しい文脈に適応するために自我発達水準の変容が起こりやすい時期なのかもしれない。そして,入学から1年半たった時点では,現在所属している文脈にも慣れたことにより,自我発達水準において安定性が見られている可能性が考えられた。 これらの結果及び前年度の分析結果をもとに,博士論文としてまとめ,東京都立大学に提出し,学位を授与された。 また,以下の2つのデータの収集を行った。 1)新しい環境への適応がどのように行われるのか,その適応の仕方が個人の自我発達水準に影響されるのかどうかについて,月1回縦断的に精神的健康について記入を求め,自我発達水準との関連を検討する。 3)話し合い場面を設定し,その中で,コミュニケーションがどのように進行するのかを自我発達段階との関係で検討する。 これらについては,次年度に分析を進める予定である。
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