研究概要 |
本研究の目的は,従来のVR(virtual reality)エクスポージャーを誰もが低コストで簡便に実施できるように著者が改良した簡易型VRエクスポージャーの効果を,VRエクスポージャーと比較することで明らかにすることであった.平成14年度は,VRエクスポージャーを行うために必要なVRコンテンツであるインタラクティブCG(コンピュータグラフィックス)開発を業者に依頼し,'作製した.そして,そのコンテンツを用い,VRエクスポージャーを行う前段階として,VR(インタラクティブCG)と簡易型VR(ビデオ映像)の臨場感を実験的に比較検討した.VRエクスポージャーが成功する為には,ユーザー(患者)が仮想環境に高い臨場感を感じることが重要であるとされている.従って,実際の治療実験を行う前に,治療効果の予測因子と考えられる臨場感をVRと簡易型VRで比較することは重要であり,意義があると考えられる. 実験手続きを以下に記す.大学生および大学院生28名(男性8名,女性20名,平均年齢22歳3ヵ月)に対し,VR(インタラクティブCG)条件と簡易型VR(ビデオ映像)条件の二つの条件下で,飛行機の離陸シーンが呈示され,それぞれの条件の直後に質問紙により臨場感が測定された.実験は被験者内計画が用いられ,条件の提示順序はカウンターバランスがとられた.実験の結果,二つの条件間に臨場感の有意差は認められなかった.このことから,著者が開発した簡易型VRエクスポージャーは,その構築に特殊な技術が必要で膨大なコストがかかるVRエクスポージャーと比較し,臨場感において同等であることが明らかになり,よって,その治療効果にも差がないことが示唆された.なお,VRコンテンツの開発に時間がかかったため,平成14年度に予定していた治療実験は平成15年度に実施するものとする.
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