本年度の目的は、魚つりゲーム遊び場面の幼児の仲間関係特に三者関係において、自己と他者の関係をいかに調整して仲間関係を形成していくのかその発達過程について検討することだった。 被験者は保育園の4歳児42名、5歳児45名の計114名だった。被験者を同性同年齢の三人組にした。月齢で4月から7月生まれの幼児を上組、10月から3月生まれの幼児を下組とした。市販の魚つりゲームを使用し、3人に1本の竿で魚つりゲームをしてもらった。遊びの様子を12分間、ビデオ録画した。 ビデオ分析により、竿の交代方法を分類した。魚を一匹ずつ釣って交代する「一匹交代」、魚を全部釣って交代する「一周交代」、基準が明確でない「ランダム交代」に分類できた。年齢・月齢別の違いを分析した結果、5歳児は全て一匹交代だったが、4歳児では一周交代やランダム交代が見られた。つまり、三者関係では4歳児は交代の基準が明確ではなく均等に竿の交代ができないことが示された。 次に、交代方法とゲーム中の行動との関連を検討した。ルールの提案や順番の指示などの「リーダーシップ行動」と自分の順番を言語的または行動的に示す「主張行動」の出現を分析した。その結果、リーダーシップ行動は交代方法別に違いは無かったが、主張行動は一匹交代で一周交代よりも多かった。交代行動の発運に抑制能力だけでなく主張能力が重要であることが示唆された。 最後に、竿の取り合いによる「いざこざ」や相手の行動に対して自分勝手に振る舞う「反抗・妨害」の年齢・性・月齢の違いを検討した。その結果、いざこざと反抗妨害は下組の方が上組より多かった。この月齢差から、保育者がクラス内で上組の幼児に責任ある役割を与えるというような役割期待の影響が、仲間との相互交渉過程に影響を与える可能性が示唆された。
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