研究概要 |
音声コミュニケーションによる対話場面では,自分の話す相手がどのような人柄の人間なのかを常に推し量りながら会話を進めていくことが必須である。本研究では,コミュニケーション能力測定のための基礎研究として,音声の基本周波数と発話速度に着目し,それが話し手のパーソナリティ印象に与える影響について重点的に研究を進めた。 従来の研究では,主に音声の時間軸上での伸縮に特化した話速変換技術であるPICOLA方式を利用してきた。しかし,本年度は,発話速度の操作ばかりでなく,声質や話速は保持したまま声の高さを変換することが可能なSTRAIGHT分析合成方式を新たに導入した。 今回,この方式を利用して基本周波数,発話速度を系統的に操作した実験音声刺激を作成し,その音声から想起される話者の性格印象を測定した。大学生の被験者を対象にして聴覚心理実験を実施し,性格特性5因子モデルに基づいたBig Five Scale短縮版を用い,評定尺度法により測定を行った。 (1)音声の基本周波数が話者の性格印象に与える影響 Exp.1では基本周波数を制御した音声刺激に対して,話者の性格印象の評定を行った。その結果,基本周波数の上昇に対し,外向性の印象は単調増加の様相を示した。しかし,協調性,勤勉性,経験への開放性では,原音声周辺での評価が高い逆U字型の傾向があった。 (2)音声の発話速度が話者の性格印象に与える影響 Exp.2では,音声の基本周波数の操作と発話速度の制御を組合せた音声刺激を使用した。その結果,やや速い発話で外向性,誠実性の評価が高く,逆にゆっくりした発話では協調性が高かった。また経験への開放性は普通の速さで評価が高く,情緒不安定性には発話速度の影響は見られなかった。これらの結果に基づいて,各々の音響パラメタによる性格印象の予測モデルを提案した。 本年度はこの結果をまとめ,平成14年9月の心理学会でのワークショップ「スピーチにおける感性情報-3-」で話題提供を行った。また,平成15年3月の音響学会春季研究発表会で発表した。
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