地域社会に不登校の子どもたちの居場所を作る富山県下のボランティア活動「麦の会」「麦の根」の会合に参加し、代表者などから聞き取り調査を行った。さらに、富山県射水郡小杉町の「小杉町子どもの権利に関する条例」に基づいて平成15年8月に開所が予定されている公設民営の「小杉町子どもの権利支援センター」準備委員会において参与観察を行った。さらに、不登校に関する著書および論文を収集して、既存の不登校研究全般について文献調査を行った。 調査からわかったことは、「麦の会」「麦の根」のような地域社会に人間形成機能を再生させる活動が、代表者の献身的な努力によって初めて成り立つという大きな運営上の問題をかかえていることである。運営に必要な人的・金銭的負担の多くを一人で請け負う代表者が、その負担を背負いきれなくなれば、代わりが見つからず、活動が終わる可能性が高い。それは、会の参加者の多くが、不登校のつらい時期だけ参加し、一段落すると次第に足が遠のいてしまい、継続的に運営に関与する人がごく少数であることに起因する。その要因には、会の組織が曖昧で意思決定に関わる機会が少ない点、代表者が会を「雨宿り」的に利用することに寛容である点、子どもから利用料を徴収することに躊躇する点が挙げられる。不登校の当事者であった代表者は、不登校で悩む子どもが他人事ではないので、親代わりを演じてその子どもたちを一人で抱え込んでしまいがちである。その結果、会の活動と代表者個人の活動の区別が暖昧になり、「代表者に任せておけばいいや」という気持ちを他の参加者に抱かせ、代表者が孤立無援となり、会の活動が停滞する。 このようななか、小杉町における公設民営による子どもの居場所「小杉町子どもの権利支援センター」は、人的・金銭的負担が特定の人間に偏らないように配慮され、今後の活動の進展が期待される。
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