地域社会の中に不登校の子どもたちの居場所を作る富山県下のボランティア活動として、平成15年4月に施行された富山県射水郡小杉町の「小杉町子どもの権利に関する条例」にともなう一連の活動を調査した。この条例の制定には多くの住民をまきこんだ議論が積み重ねられたが、そのなかでも、心療内科医師、不登校経験者、フリースクール講師を始め多様な人びとによって設立されたNPO法人「子どもの権利支援センターぱれっと」を中心に調査を行った。このNPO法人は、不登校児の居場所づくりを活動目的の一つに掲げ、条例に基づいて小杉町の補助金を受けて公設民営の施設として、JR小杉駅前商店街に「小杉町子どもの権利支援センター(愛称:ほっとスマイル)」を平成15年8月に開所した。この開所に向けたNPO法人の会合や、小杉町との打合せ、開所後の運営委員会に参加し、そこでの議論から、人びとがこの活動にかける思いや活動を実現するための具体的な問題点などを中心に記録した。また、NPO構成員の間で交わされた電子メールのメーリングリストの内容を分析した。そうした居場所づくりの運営側の議論を検討する一方で、子どもたちがどのように居場所を利用しているのかを明らかにするために、ほっとスマイルで参与観察を行った。この参与観察を通して、子どもたちの生の声を聞き取り、不登校後、地域の居場所で暮らす子どもたちの問題点を記録した。 このように富山県内の調査のかたわら、子どもの権利条例を既に制定している神奈川県川崎市で調査を行った。川崎市でも、富山県小杉町と同様に、NPO法人が条例に基づいて公設民営の不登校の居場所づくりが進んでおり、この関係者から聞き取り調査を行った。 以上のフィールドワークとともに、不登校、地域社会づくり、社会調査方法論について、文献調査を進めた。
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