平成14年度は、主に米国において調査を行い日本の場合と比較を行うとともに、学会等での発表や関係分野の研究者と日米で意見交換を行い、開発活動の制度化をもたらしている要因と要因間の因果関係を検討した。まず、以上の調査と日米比較の結果、日米間では、製品コンセプトの特徴が系統的に異なり、それにともなって製品開発プロセスのあり方にも相違が生じていることが明らかになった。日本メーカーの製品コンセプトは小型・軽量化と多機能化で特徴づけられる一方、米国におけるメーカーの製品コンセプトは通信機能等の基本的性能の充実、操作性、デザインを念頭に置いたものであった。さらに、日本メーカーでは半年以下での短期間での新モデル開発が行われていたが、米国のメーカーではコスト(端末価格)が強く意識されていた。こうした相違は、両国の市場では、それぞれ携帯電話端末の持つ意味、すなわち支配的な製品コンセプトが異なっており、製品開発競争の焦点が異なっていることを示唆している。 日米それぞれにおける支配的な製品コンセプトのあり方は、メーカー間の競争の中で形作られてきたと考えられる。しかしながら、こうした競争は、日米それぞれにおいて支配的な製品コンセプトを実現する価値ネットワーク、とくにメーカーと通信事業者との制度的な取引関係にもとづいて行われている。調査の結果は、日米それぞれにおいて支配的な製品コンセプトを実現するように、制度的取引関係にロック・インされて、メーカーは競争を行っていることを示唆していた。そして、こうした競争の中で、日米それぞれの開発プロセスは方向付けられていることが明らかとなってきた。以上のことから、平成14年度には、製品開発ルーチンは、それぞれの市場における制度的な取引関係と競争の中で、一定の支配的な製品コンセプトを実現することによって制度化されているという見通しが、提示された。(790字)
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