昨年度のフランス調査を通じて、地域通貨SEL(地域交換システム)の多くが1901年アソシアシオン(非営利社団)法の制度的枠組のなかで活動を行っていることが明らかになったため、アソシアシオン法の制度や実態、活動を支える財政的基盤などにかんして、調査を行った。同時にSEL参加者へのインタビュー等をつうじて、アソシアシオンやSELにかんする参加者の意識についても調査を実施した。さらに、RERS(知識の相互交換ネットワーク)にかんしては、団体の承認を得て、パリ郊外の本部事務局において短期間のフィールドワークを実施し、活動実態の把握を行った。 本研究において明らかになったこととして、以下の点が挙げられる。 (1)フランスの地域通貨SELはフランス独自の非営利社団であるアソシアシオンであり、1901年アソシアシオン法の枠組みで活動していることが多い (2)アソシアシオンは活動資金を助成金に大きく依存しており、その結果活動が政治に大きく左右されやすい傾向にある (3)アソシアシオン法人格は容易に取得することができるため、団体内部で紛争が生じた際には、分裂を繰り返す傾向にある (4)SELの参加者には独居世帯率が高く、また壮年期以降の女性が助け合いを求めて参加する傾向にあり、活動も活発である (5)RERSの参加者は移民や移民二世が多く、ネットワークの活動をつうじて社会化する過程でアソシアシオンが大きな役割を果たしている (6)SELおよびRERSは、ともに「社会的排除」と呼ばれる層に定着しており、比較的生活困難にある層のあいだの相互扶助ネットワークとして機能している。 なお、本研究の成果は、11の研究発表および研究会・講演会報告等で公開している。
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