1.当該地域の地域研究の深化 当該地域は必ずしも閉鎖的な山村ではなく、その資源の乏しさゆえに外部社会からの様々な援助・補助を受け入れて存続してきた地域である。そのような歴史と現在のムラの多文化的状況との間には何らかの連関性があるのではないかという仮説を実証するためにムラの史・資料の収集および分析を行った。また、1980年代後半からみられる国際結婚とこの地域の多文化社会づくりとの関連性をも考察した。 2.当該地域のキリスト教徒に対する聞き取り調査 昭和5年の当該地域におけるキリスト教開伝以来、ムラのマイノリティであるキリスト教徒たちは様々な社会運動を展開して地域づくりを試みてきた。そして宗教的マイノリティである彼らは特に社会運動家・賀川豊彦の協同組合運動の思想を取り入れて長い間地域づくりをすすめてきたことが明らかになった。この地域のクリスチャンたちのナラティブ資料はある程度収集できたが、これと賀川の思想をより厳密に照らし合わせて分析することが課題として残されている。 3.農村伝道の調査および昭和初期からの当該地域におけるキリスト教徒の役割の分析 キリスト教徒への聞き取りより得られたライフヒストリーを資料として、「よそもの(stranger)」、「マージナルマン」「知識人」などの概念を道具として社会変動期における個人の役割を分析使用と試みたが、資料の収集までが本年度の限界であった。来年度は、農村伝道一般に関する資料も用い、当該地域のみならずより広いコンテクストの中で、この当該地域におけるキリスト教徒の役割を考察する。 4.多文化社会の理論的考察 カナダおよびアメリカの多文化・多民族社会の様相と移民受け入れ施策をひとつのモデルとして、日本における多文化社会具現化の理論的考察を開始した。これらの理論を分析枠組みとして、多文化社会形成に関与するクリスチャンの活動と国際結婚の役割の分析についてはまだ多くの課題が残っている。
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