平成15年度の研究においては、(1)経験的仮説及び調査項目の決定、(2)対象者・対象地の決定と調査票の作成、(3)アンケート調査の実施、(4)調査データの集計・分析というステップを経て、調査研究を展開してきた。 調査研究の具体的内容としては、先行研究の結果をふまえながら、生活時間、時間感覚のほか、消費行動、メディア接触、規範意識、職業的アイデンティティなどを項目設定した。また、分析にあたっては、前年度の研究において見いだされた性と階層の交互作用を焦点として、時間意識やアイデンティティ形成について分析を行うことにした。そして、山口・福岡の2市において、大学生2000名を対象者として、自記式調査票調査を行ったところ、1672票の回答を得られた(回収率83.6%)。 これらの回答を分析した結果、現時点では、およそ次のような知見が見いだされている。 a)大学生における勉強時間や教育アスピレーションは、2学年で低下し、3・4学年で上昇するU字型の曲線を描く。 b)性と階層の交互作用がみられた項目としては、将来展望や規範意識が挙げられる。大学という期間は、おおまかにいって、消極的な男性の意欲をなんとか加熱し、積極的な女性の意欲を冷却する期間として捉えられる。 c)調査対象地による差異は、消費行動やメディア接触、職業的アイデンティティなどの項目においてみられた。しかし、それが都市部と地方との格差に由来するのか、大学間・学部間格差や階層間格差に由来するのかは、今後慎重に分析していく必要がある。
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