本年度は、研究初年度であるためデータベース作りを主な課題とし、それに加えて基礎的な聞き取り調査を合わせて行った。データとしては、以下の4通りのものを整備中である。(1)朝日新聞デジタル・ニュース・アルカイブの全文記事検索から参政権関係の記事を複写し、現在記事を分類中である。(2)より広く在日コリアンの運動の推移のなかで参政権問題をとらえるため、戦後を通じた在日コリアン関係の新聞記事を、朝日新聞縮刷版から複写した。これは、複写が終わったところでデータ整備は来年度の課題となる。(3)在日大韓民国民団の機関紙から、関連する記事を複写し、現在その言説分析を行っている。(4)在日朝鮮人総連合会の機関紙から、関連する記事を複写し、(3)との比較で反対論の根拠の分析を行っている。聞き取り調査としては、民団国際局や参政権裁判の原告団にヒアリングを行い、問題の展開の把握やキーパーソンの確定を行った。 しかしながら、経験的なデータについては現在整備中であり、政党などへの聞き取りも含めて、実証研究の成果を出すのは来年度以降の課題となる。今年度実績として出した研究論文は、参政権問題に関わる理論枠組みの整備であり、国際労働移動論や政治参加、社会運動論などでの基礎的・理論的な研究の成果を刊行したものである。それに加えて、自治体における外国人政策と参政権推進決議の関連を分析した論文を現在執筆中であり、来年度以降は実証的な知見に基づいた論文を順次刊行していきたい。また、データベースのコード化や内容分析を行ううえでの方法論についても、近日中に論文を執筆する予定である。
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