本年度は、(1)初年度から継続していたデータベースの本格的な作成と、(2)聞き取り調査、(3)それにマイノリティによる社会運動の理論的なサーベイを中心に行った。(1)このうち、最大のデータソースである朝日新聞全文記事検索のデータは、現在ほとんど整備を終えつつある状態である。まだデータのクリーニングが残っているが、過去15年間における行為者や言説の変遷が、年度明け早々には明らかになる。これについては、来年度半ばにはデータ開示を目的とした論文をまず執筆する予定である。2)聞き取り調査については、外国人参政権とリンクされて政治的な道具となっている国籍の問題について、運動団体などに聞き取りを行っている。二重国籍や在外公民の選挙権とも関係するため、在日コリアンのみならず、日本人で二重国籍を要求する運動を展開している団体や、移民送り出し国における在外公民の選挙権に関して、バングラデシュで聞き取り調査と資料収集を行った。この成果については、2003年3月に国立民族学博物館で開催される国際シンポジウム「トランスボーダーの人類学」で第一次の報告を行う。(3)理論的サーベイについては、社会運動組織の戦略、政治的機会構造と社会運動の関係、グローバル化が社会運動に及ぼす影響について、それぞれ論文をまとめ、2004年3〜4月には刊行される予定である。この(1)〜(3)の項目全体を束ねた成果はまだ出ておらず、(3)の枠組みを(1)で検証し、(2)で解釈するような成果を出すことが、来年度の課題となるだろう。
|