本年度は最終年度ということもあり、これまでの研究成果に関する発表を2回行った。第一が「日・韓・東アジアの「平和」と「共生」□□定住外国人の地方参政権シンポジウム」で行った「地方市民権-国民国家をどう超えるか」という講演である。第二が、日本社会学会で行った「モダニティの変容とエスニシティ」という報告である。これらは、本研究で進めてきた理論枠組みの整備に関する直接の成果であり、第一の報告では「国籍と参政権/国民と参政権」の差異に着目して、従来の議論を国民国家との関わりで捉えなおした。第二の報告では、「排斥と個人化」というこれまでとは異なる切り口を提示した。というのは、昨年度の報告書で述べたように、課題の展開にあたっては、要求主体の変容と排除の論理の検討が必要だからである。すなわち、外国人参政権の問題を通じて明らかになったのは、それを推進する言説のみならず、それに反対する外国人排斥の運動まで射程に入れないと、十全に議論できないことであった。こうした問題意識にもとづいた口頭発表は、すでに論文にまとめ2005年中に刊行予定である。それに加えて、これまで調査してきた自治体の対応について、その政策を経路依存性という観点から分析した結果を、ブラジル人の移住過程について書いた『顔の見えない定住化-日系ブラジル人と国家・市場・移民ネットワーク』の1章に執筆した。残る課題は、これまでの調査や新聞記事、国会議事録などで構築したデータベースにもとづく、実証的な側面を中心にした成果発表である。
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