高齢社会においてとくに重要となる市民的協同の広がりと、その活動基盤となる地域社会の形成を展望していく本研究の課題に即して、本年度は、前年度に引き続き、保健・医療分野における非営利・協同セクターとして注目される、愛媛医療生活協同組合の事業および組織活動に関する参与観察や聴き取りを継続的に実施するとともに、福祉分野でのボランタリーな目的意識的市民活動の実態を把握するために、愛媛県および松山市でのボランタリーグループの存在形態について、愛媛県社会福祉協議会および愛媛県NPO支援センターでの聴き取りと視察、松山市社会福祉協議会および松山市ボランティアセンターでの聴き取りと視察を行った。愛媛県のNPO・ボランティア活動団体は、約150団体にのぼるが、このうちNPO法人として認証されている団休は131件となっていた。なかでも、健康、医療または福祉の増進に関わる活動を展開しているNPO団体が全NPOの80%以上を占め、さらにこうした団体のうち、活動分野を高齢者支援としているものが40%以上を占めていることから、高齢社会においてボランタリーな活動が効果的に地域社会を基盤にしつつ展開している状況が明らかとなった。また、松山市ボランティアセンターに登録しているボランティアグループは239団体にのぼり、当センターが果たすボランティアコーディネート事業が、団体相互の連携のあり方やニーズの的確な把握をいかに達成し、地域社会の網の目のなかに結びつけていけるかという点が問われることとなった。この背景には、地域コミュニティの地域的限定性とNPOの非限定性がいかにして連携するかという、本研究の最大の分析課題がなお残されていることとも関わっており、地域コミュニティのなかにNPOを発展的に位置づけていくためにも、伝統的地域住民組織など地域諸集団とのかかわりを、さらに検討していく必要がある。
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