精神障害のある本人(精神障害者当事者)同士の支えあいの場で、当事者職員としての立場を得た場合、精神障害者の就労という側面が加わり、様々な課題が生じてくる。精神障害者地域生活支援センター(以下、センター)では、精神障害者当事者が職員として就労しているケースがしばしば紹介されることがある。しかし、全国的にみて、当事者職員の実態は把握されていない。センターでの当事者の就労実態を全国的に把握すること、当事者職員が就労しやすい環境づくりや就労に伴う課題を把握することを目的に、全国418箇所の施設を対象に質問紙調査を実施した。回収率は55.7%(233箇所)であった。常勤、非常勤を含めて調査時点で当事者職員として雇用していたのは40箇所で、82人の当事者職員が就労していた。そのほとんどは、非常勤であった。主に担当している業務はピア・カウンセリングなど相談・助言、セルフヘルプ活動に関すること、見学者の対応や案内などであった。雇用実績のある施設は、その7割が当事者職員の配置を目的に、職員や関係者の推薦によって採用者を決定していた。就労環境として、施設の36%が当事者雇用に関する助成金を活用していた。そして、ほとんどの施設が当事者が就労するのになんらかの工夫をしていた。特に体調に配慮し労働時間等の工夫が72%と最も高かった。当事者職員の就労での課題として、「体調をみながら業務内容をあわせていくこと」「適性や希望を取り入れながら業務内容をあわせていくことが高い割合であげられた。精神障害の特性に合わせた体調管理の支援や業務内容の調整が重要であることが明らかとなった。また、各センターは特色ある活動を行っており、そのなかで当事者職員に対する業務内容の調整も雇用施設側が配慮していることがうかがえた。
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